風とともに暮らす、日本の知恵を今の部屋に

むかしむかし、とはいいつつそんなに昔ではないが、
日本の家々は自然と寄り添い、風を友とする暮らしを大切にしていました。

夏には、格子窓や簾越しに差し込む光とともに、そよそよと通り抜ける風が部屋の奥まで涼を届けてくれました。
風鈴の音が揺れれば、目を閉じて季節の音に耳を澄ませ、心までも涼しくなるような感覚に包まれます。

冬には、家の隙間から入り込む冷たい風さえも、時に「季節の手紙」として感じ取っていました。

火鉢や囲炉裏の温もりとともに、外の寒さと家の中の暖かさの対比が、暮らしの豊かさを教えてくれていたのです。

現代の暮らしの中で、私たちはその「風の記憶」をもう一度、部屋の中に取り戻したいと願いました。

軽やかな麻素材のレースカーテンを窓辺に掛けると、わずかな風でもふわりと舞い上がります。
その様子はまるで、風が部屋に遊びに来たような優しさを感じさせます。

現代では、ロールスクリーンやブラインドなどが人気でもあるが、
風を感じることができるのは、
布(ファブリック・カーテン)であると感じさせてくれる。

窓の外には風にそよぐススキや枝垂れるグリーンを配置して、視覚的にも風の存在を感じられるようにしました。

天井から吊るしたモビールは、風が吹くたびにくるりと回り、光を受けて影がゆっくりと壁に踊ります。
それはまるで風が部屋の中で戯れているようで、ふとした瞬間に子どもの頃の記憶がよみがえってくるのです。

香りにも工夫を凝らしました。
ヒノキや白檀のアロマを風の流れに乗せて、部屋の中をゆっくりと漂わせれば、
まるで古民家を訪ねたような、懐かしさと清らかさが混ざり合う香りの時間が生まれます。

そして、風の音も大切にしました。

ガラス越しに聞こえる葉擦れの音や、風が家の隅に触れるときのささやき。
エアコンの人工的な風では得られない、自然の風が奏でる音の響きを、部屋の静けさの中に取り戻すよう意識しました。

こうして私たちは、ただ“快適”を求めるだけではない、もっと繊細で奥行きのある空間をつくりあげました。

それは、目に見えない風の存在を、視覚・聴覚・嗅覚・触覚で感じられる、“五感で楽しむ空間”。

そしてそこには、昔ながらの日本の知恵と美意識が、今の暮らしの中で静かに息づいているのです。

季節ごとに変わる風の表情を感じながら、私たちは今日もまた、心をやわらかく整えていきます。